現代版にアップデートされた「民藝」の精神性
もともとは美大を目指していた、河内 啓さん。一度は夢を諦め、一般企業に就職した彼だが、地元・静岡市で陶芸家の平嶌康正さんとの出会いをきっかけに陶芸の道を志すことになったという。
民藝運動の第一人者・柳宗悦らが提唱した、その概念を自身のルーツとして据える、河内さん。機械的に生み出された工業製品にはない、機能美を追求した職人技の精神性を、彼は現代版「民藝」としてアップデートしていく。「柳宗悦の想いはもちろん根本にありますが、その概念を現代人の生活に見合う形に昇華してこそ、真の民藝であると思っています。」作品性を前面に押し出した強烈な個性は、機能美には不必要だ。しかし、単に無駄を削ぎ落としただけではない味わいが作品に残っている。
??彼が作品に込める想いはもうひとつある。「陶器は、自然と人間の仲介役である」というものだ。ざらっとした土の感触や、釉薬が自然と流れたままの部分を残し焼き上げることで、もともとは自然の一部であったことを感じさせるような粗さが、隠し味となっている。機能美とにじみ出た個性が調和する河内さんの作品には、確固たる「民藝」の信念が宿っているようだ。
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